「冬眠する熊に添い寝してごらん」を見てきました

今日1月31日、12:00~の「冬眠する熊に添い寝してごらん」を見てきました。
私にとってはこれが冬眠熊の初日であり千秋楽!

感想としては、なんかもう……すごかったです。色々な意味で。

追記から印象に残ったこととか感想とかをちょろっと書いていきたいと思います。
ちなみにストーリーに関する考察はありません。内容が複雑で文学的で私にはなかなか難しく、考察できるほどストーリーを噛み砕ききっていないからです……。

こういう、がっつり舞台!という感じのものを見たこと自体今回が初めてでしたし、舞台に関しても演劇に関してもズブの素人もいいとこの人間、かつ原作も未読ですのでそういう諸々をご了承の上読んで頂ければ嬉しいです。いち上田くんファンの感想ということで……。
当然のようにネタバレありますのでご注意ください!

開演の15分前くらいに会場入り!初シアターコクーンシアターコクーンの座席って意外と横との幅が狭いんですね。動いた時に横の方に軽くぶつかってしまったりして申し訳なかった……
あと今回学んだことは、劇場内って結構あったかいのでもう少し薄着でもよかったなってことです。真冬用の厚いニット着てきてしまって舞台中若干暑かったです……。次からは気を付けよう……

とまあ私のどうでもいい裏話はおいといて。
開演前のアナウンスが流れて、一番手前の緞帳が上がって、そして舞台の奥の扉も開くと外の駐車場まで見えます。
え?何?どういうこと??普通に人歩いてるよ?外からこっちって見えるのかな?荷物の搬入のお兄さんが足早に通り過ぎていったよ……?とかなり戸惑いながら少し待っていると、一匹の犬が歩いてきて外からそのまま舞台に上がってきます。
え、犬入ってきちゃったよ大丈夫なの!?と一瞬思ったんですが、よく見たらなんか……中の人の黒タイツ見える……!人じゃん……!!?あっそういう演出ーー!!?
と、この時点でかなり動揺。
犬が完全に舞台の中に入ったら、舞台の奥の扉は閉じます。そして犬が舞台上を歩き回り、そのまま本編が始まっていきました。

いやしかしあの犬の着ぐるみ(と言っていいのか分からないけど)すごいんですよ。サイズ感とか中の人とかに気付かないと本当の犬に見える。再現率が半端なく高い。それは他の、熊をはじめ舞台美術全体に言えることなんですけど。あんなに本格的に犬を再現できるものなんだ!って衝撃的でした。舞台美術ってすごいんですね……!美術班の方の技術力と気合を感じます。あれはすごかった~~

一番最初に出てきた人間キャストは勝村さんでした。犬とツキノワグマと勝村さんが舞台上にいる中、勝村さんが一人で喋り続ける。それがもうとんでもない量を、一人で。
「会話は掛け合いできっかけがあるからまだ覚えやすいけど、一人だけでの長台詞は覚えるのが大変」とかってドラマの裏話とかでよく聞く話ですけど、この量を全て覚えて自分のものにするってものすごいなって……。というか勝村さんに限らず、メインキャスト陣は大体長い長い独白シーンがあるんですが。

明治時代パートが終わると、現代パートへ。川下兄弟の港でのシーンは過剰なほどに仲のいい兄弟って感じで。笑える掛け合いのシーンで、ドシリアス舞台だと思ってた私はここでちょっとびっくりしたり……w

ひばりさんの登場シーンは、鈴木杏さんの演技力、声量などなど本当にすごかった……!息をのむ演技でした。役者さんってすごい……!

ひばりさんの実家に多根彦さんが挨拶に行くシーンは可愛かったですね!和んだ!
この後の展開を知ってから考えるとなんとも言えない気持ちになりますが……!(/_;)
このシーンの終わり、暗転してからくるっと舞台に背を向けて舞台袖に戻っていく上田くんを目視できてちょっと嬉しかったです。笑 なんというか、あそこは多根彦さんじゃなくて上田くんだと思うから……

おばあさん達が正面を向いて会議?をしているシーンは、何だか独特の気味の悪さみたいなものがありました。勿論、舞台的にいい意味で。まだことが普通に順調に進んでいる中で、このシーンでこの話に潜む暗い部分複雑な部分歪んだ部分がちらちらと見え始めた感じがしました。まあ私の主観なので思い込みだったらお恥ずかしいんですけども。

回転寿司屋のシーン(1回目)では、セットの設営がめちゃくちゃ早いことにびっくり!!回転寿司のベルトコンベアや席が1階席の前方~中央の通路も使ってのセットだったんですけど、前のシーンが終わってすぐ次のセット運んできたな~と確認した数秒後にはあの長いセットが完璧に組みあがってるんですよ。キャストさんもその席にちゃんと座ってて、舞台上のセットもボックス席とか色々なパーツがあるのにそれも完璧で……。こ、これがプロの技!すごい!なにこれ魔法か!!
回転寿司屋での一さんとひばりさんの事の顛末はなんだか舞台的?というか、ドラマとかではなかなか見ないハイスピードかつ派手な展開だなーって感じで新鮮でした。
寿司屋さんの「新手の食い逃げ」発言はちょっと笑った。
一さんとひばりさんが去った後、急いだ様子で会社帰りの多根彦さんが回転寿司屋に入って来るシーン。「――二人、足りない」(台詞間違ってたらすみません。こういうニュアンスのこと……)、そう言う多根彦さんで終わるこのシーン。多根彦さんの表情から無邪気で青年らしい笑顔が消えた瞬間。その一言が、多根彦さんの表情が、この後の悲劇を予感させた気がしてすごく印象的でした。うう、この後つらくなっていくなあ……


2幕。
勝村さん(すみません役名が分からず……)とその息子さんのシーン。勝村さんがふざけ始めて、それを止めない息子さんに「つっこめよ!」って頭をぺしぺし叩いてたのには笑った。勝村さんやっぱいいなー!
あと一さんとおじいちゃんのシーンも、おじいちゃんふざけてましたね!楽しそうだった。意外とギャグテイストのシーンやアドリブ入れていいシーン多いんですね!

犬仏、のくだりって2幕でしたっけ? 犬仏衝撃的だった…… 大仏が、犬仏に……。大仏の顔がくるっと回転して出てきた犬の顔があまりにリアルでこれも美術スタッフさんの本気感じまくりでした……すごい

回転寿司屋のシーンぶりに出てきた多根彦さんは、もう1幕の無邪気さの面影もなく。
「(自殺未遂が)7回です、たった7回!」そう問答する多根彦さんは、完全に狂気に染まっていました。あまりに1幕と違いすぎて、だからこそ余計に狂気の中にいる彼が強く印象付けられる。
多根彦さんの何にゾッとするかって、会社には変わらず出勤し続けていること。同僚たちには何も悟らせず、1か月間30分睡眠だったというのに、恐ろしいほどに変わらず恐ろしい速さでエリートコースを駆け上がり続けていること。本当はこんなにも狂っているのに、狂気の渦にのみ込まれているのに、「いつも通り」を演じられる多根彦さんの狂気は多分普通の狂気よりも質が悪く恐ろしい。
BGMや周りにいるおばあさん達、映し出されている漢文みたいな文章も余計に、多根彦さんの狂気の恐さや気味の悪さみたいなものを増幅させていた感じですごく印象的なシーン。

そして次に出てきた多根彦さんは、一番最初と同じようにベビーカーを押して港にいた。もう、ひばりさんは多根彦さんの傍にいないのに。
狂った多根彦さんと、オリンピックに向けて今まで通り歩み続けている一さんという対比。
最初の港のシーンはではあんなにも仲が良かったのに、と思わされてしまう。
ただ狂ったんじゃなくて、ちゃんと会話のキャッチボールや論理立てた発言もできるというのがやっぱり多根彦さんの狂気にゾッとさせられるところだなあ。理性を失った人間じゃなくて、ちゃんと人間としての思考回路はあるのに狂ってるってところが。
会話の後ろでは、ベビーカーで遊ぶ犬が二匹。遊んでいるうちに倒れるベビーカーが象徴的であり、印象的。
上田くんの演じる「狂気」、圧倒されました。結構長いシーンだったと思うんですけどそうは感じなかった。私は1階席の後ろの方で見ていたので、欲を言えばもっと近い席で表情まで近くで見てみたかった。上田くんの演じる狂気をもっと間近で細部まで見てみたかった、と。勿論私の席からでもちゃんと見えはしたんですが、欲を言うならという話で。
多根彦さんが口にした最後の台詞は、最初に仲の良かった兄弟の姿を見せつけられただけに響いた。細かい言い回しまでは覚えていなくて間違っていたらお恥ずかしいので台詞は書かないことにしますが、狂い、あんなにも慕っていた兄に対する弟が最後に言った言葉が、そうかそういう台詞か……みたいな。まさに、悲劇だなって。
余談ですが、多根彦さんが立ち去る時、私のブロックの前の中央通路を通っていったので近くで見られたのも上田くんファンとしてはちょっとテンションが上がってしまいました。あんなに近くで上田くん見たの初めて……。横顔ちょうかっこよかった……

そして弟の言葉通りに行動する兄。舞台上は、過去と現在がクロスした混沌。
回転寿司屋(2回目)は、その空間自体が狂ってる感じでしたね。お客さんとかの顔が、熊の被り物になるやつ……。あとお寿司屋さんで寿司を握る役に犬や熊がなっていたりとか。

港のシーン以降、多根彦さんは出てくることはありませんでした。
あの後多根彦さんはどうしたのか。どうしているのか。多根彦さんのその後に思いを馳せずにはいられません。


そして舞台の幕は降り、カーテンコールへ。
上田くんは最後に出てきて、センターに立って、お客さんにお辞儀する時には他のキャストさんにお辞儀する方向を指揮していた姿がすごく格好よかったです。ああ、座長なんだなぁ、と。
こんなに壮大な舞台で、こんなに沢山のキャストさんの中で、中央に堂々と立っているのが上田竜也だということ、何だか勝手にファンとして誇らしくなってしまいました。
そこにいたのは無邪気な多根彦でも狂気にのみこまれた多根彦でもない、一人の立派な、等身大の30歳の「役者」上田竜也でした。(本業はアイドルであり、役者はその仕事のうちのひとつだから役者と呼ぶのは適切ではないかもしれませんが、今回はあえてそう呼ばせてください)

東京は明日が千秋楽、無事に終わりますよう残りの公演のチケットを持っていない私は自宅からひっそりと応援しております。
ただ声がちょっと枯れ気味なのが気になったし心配なので、ちゃんとのど飴とか喉ケアばっちりしてね……!(おかん目線)