THE DIGITALIAN、という風景。THE DIGITALIAN、という生き物。

2014年12月22日、月曜日。ARASHI LIVE TOUR 2014 THE DIGITALIAN、東京4日目。開演時間の18:00。
その瞬間、東京ドームは生き物となった。

OP映像と共に、ふっと消える客席のファンライト。そしてドクン、という音と共に赤く点滅する様がまるで東京ドームの鼓動のようだった。東京ドームという巨大な一つの生き物が生まれたかのような錯覚に陥った。
ドクン、ドクンと段々と早くなる音とファンライトの点滅。そこから始まる「Astarisk」。
実はよく聴いてみるとAstariskのイントロにも小さく鼓動のような音が入っていて、このOPからこの曲に繋げるところまで、もしかしてアルバム曲を選ぶ時点で全部計算していたのでは?とさえ思える完璧すぎるコンサートの始まり。
先ほどまで真っ赤に染まっていた客席が、今度は青と白に染まる。制御しているのは全部機械のはずなのに、その統一された、計算されつくした光がまるで東京ドームという一つの意思を持った生き物の意志のよう。

今までに見たこともない演出にぽかんとしていると、2曲目の「Take Off!!!!!」が始まる。
明るくもデジタル感のある、このツアーで象徴的な曲の一つである「Astarisk」と演出で観客の心をぐっと引きつけて、からのファンにとっては問答無用でテンションの上がる大事な大事な曲で『Good evening ladies and gentlemen.』と客席に挨拶を。
嵐のコンサートが初見で、嵐にそんなに詳しくないという層も置いていかないこの曲順。この曲は1曲目でも駄目だったし、中盤やアンコールでもきっと駄目だった。こんなにも完璧な曲の置き方があるのか。

そして3曲目にアルバム曲「Wonderful」もしっかり押さえて、バックステージ側へ。
4曲目に「Welcome to our party」で『始めようか?Party time』『準備はもうできてるはずだろう?』とこれからのコンサートへの期待をどんどん煽っていく。
5曲目にシングル曲「Bittersweet」。嵐に詳しくないお客さんでも、月9主題歌のこの曲くらいは何となく聴いたことがあるかもしれない。聴きなじみのある曲が序盤にあることの安心感。メインステージでこの可愛い振りをしっかり踊ってくれるのも、既存ファンにとっては嬉しい。

翔さんの挨拶を挟んで、一呼吸おいて始まったソロコーナー一発目は「Disco Star」。
神輿に乗って運ばれてくるディスコスター様。印象的過ぎるダンスを踊るディスコスター様。ダサい!?いや格好いい!?なにこの衣装!?なにこの振付け!!!?なんかもうよく分からないけど、とにかく楽しい。油断していると時々挟まる腰振りのようなセクシー振付けにノックアウトされる。
\フッフゥ~!/\フワッフワッフワッフワッ!/\Disco Star~~~!!!!(コール)/と叫ぶ瞬間の会場のボルテージが半端じゃない。序盤にこれを持ってきたセットリストが天才。会場がこの瞬間ひとつになった。
楽しい感じになるだろうな、とは予想していたものの、ここまで振り切ってくれるとは。相葉さん、最高すぎる。Disco Star様にお歳暮贈りたい。

続いて出てきたのは翔さん。Disco Starとは打って変わって、突然英語で客席に問いかけ始める。これまでテレビで稀に披露されてきた翔さんの英語にヒイヒイもんどりうっていたおたく、突然の供給過多に動揺。
"幸せって何だろう?""夢って何だろう?"英語でそう問いかける翔さん。そして始まる「Hey Yeah!」。なんというか、すごく翔さんらしい。30代の翔さんの等身大という感じがして、演出も含めてすごく聴いていて気持ちがいい。

トロッコで外周を回りながら「One Step」を歌い、その次の曲のイントロがかかった瞬間客席の温度がふわっと少し上がる感覚。かの名盤(と、私は思っているし二宮さんもそう言っていた)『Time』から、嵐コンには欠かせない名曲「Oh Yeah!」。
個人的に、Timeコンでこの曲を踊っていたのがすごく好きだっただけに、最近トロッコお手振り曲になっていたのが少しだけ残念に思っていたのだけれど、(他メンバーはトロッコに乗ったりはしていたものの)私が一番近かったバクステ側に相葉さんと翔さん(だったよね…?他の曲と記憶が混ざってるかもしれません。他メンだったらすみません…)が残って楽しそうにわちゃわちゃしていたり客席を煽ったりしてくれていて、制御されたファンライトもすごく綺麗で、嬉しかった。

そして次も嵐コンには欠かせない「ハダシの未来」。嵐コンに来たら客席もみんなでハダシの未来を踊るということは欠かせない!!

前半最後の曲は「Love Wonderland」。GUTS!通常盤のカップリング。確かリリースの時にやたら推していた記憶があったので、しっかりセットリストに入れてくる嵐の素直さがなんだかおかしかったり。でも推すだけあってめちゃくちゃ可愛い曲。メインステでしっかり踊ってくれるのが嬉しい。曲も振付けもかわいい。二宮担としてはこの曲の二宮さんの歌声がかわいくてめちゃくちゃ好き。通常盤のカップリングだから、この曲を予習してこなかった人も少なくないかもしれないけれど、恐らく知らなくてもアイドルが好きなら無条件でテンションの上がる1曲では?と思う。

アイドル最高!と言いたくなる、可愛い「Love Wonderland」が終わり、ここでMCタイムへ。
ここまでファンも、恐らくそうでない人も一切飽きさせない怒涛の演出、圧倒的な実力を見せてきた嵐が、MCに入った途端いつものゆるふわトークへ。何この曲中との落差。MCの雰囲気だけは変わらない安心感がすごい。
深夜の嵐、わちゃわちゃ嵐大好きな嵐ファンは改めてここで「嵐…好き…!!!」ってなる。単純。とんでもなく壮大なギャップ萌え。なんだこれ嵐ずるい…!!!好き!!!!!

MCでファンライト演出やウェーブの説明をした後、始まる「WISH」。クリスマスにぴったりなこの曲に合わせて、客席がファンライトの青色の点灯と共にウェーブをする景色が、光の海、光の波のようでものすごく綺麗。ファンライトの点灯はコンピュータ制御できるけど、ウェーブと同時に光らせるというのはアナログじゃないとできないことだなと。デジタリアンツアーに敢えてそこを盛り込む嵐…というか嵐のウェーブ大好きっぷりがかわいくて仕方ない。

WISHの後は、ソロ3曲目。二宮さんの「メリークリスマス」。客席のファンライトが消えて、しばらくの間二宮さんを映すモニターもモノクロ。そして終盤の1番いいところで、パッと点る客席のクリスマスカラーのファンライト。同時にカラーになるモニター。映し出された二宮さんの衣装もポップでかわいいクリスマスカラー
いかにも二宮さんが好きそうな、ニクいベタな演出…なんだけどそれがいい。たまらない。分かっていてもハッとする演出…!
ソロ曲の歌詞間違い常習犯の二宮さんが今日は歌詞を間違えなかったからか、歌い終わった後ご満悦な顔で帰っていくのがかわいくてかわいくて本当にずるい…!!!!

二宮さんのソロが終わると、次は潤くんの「STAY GOLD」。いつもはイントロでMJウォークをしたりゲーム風の演出をしたりと凝った演出をすることが多い潤くんソロだけれど、今回はかなりシンプル。でも、だからこそ白い衣装で踊るというシンプルな曲中の演出やファンライトの綺麗さが映える。個人的には、近年の潤くんのソロの中でもかなり好き。

続けてまたソロ曲、最後は大野さんの「Imaging Crazy」。安心感のある美声とダンスの格好よさに、毎年のことながら見惚れる。

ソロコーナーが終わると、「Tell me why」でしっとりと聴かせる。…と思えば、次の「TRAP」では特効と共に攻めまくるダンス。この人たち、数十分前までゆるふわMCしてた人たちだよね…?挑戦的な曲に乗せて特効の中でガシガシ踊るダンス、格好よくないわけがない。

続いてはTroublemaker~Lucky Manをデジタルアレンジで。Popcornの時にLucky Manを「Popcorn Man」として歌っていたことも然り、定番の盛り上がり曲をその年のテーマに合わせてアレンジしてくるのが素晴らしい。定番曲で盛り上がれる嬉しさと新鮮さが同時に味わえる。『Lucky』\Man!/『Lucky』\Man!!/の掛け合いをできる嬉しさといったら。

客席のファンライトがふっと暗くなり、モニターの前で大野さんがすっと手を上げる。大野さんが手を動かすと、モニターの中の線が心電図みたいに動いて、ポロン、と東京ドームに音が響く。息を飲んで見守る観客。しんと静まり返った東京ドームにポロン、ポロンと落ちる音。次は潤くん、相葉さん、二宮さん、翔さん…そして5人それぞれの音が合わさって、混じり合って、音楽が生まれる。自分の筋肉の動きを音に変える、筋電演出。
ファンライトによって東京ドームという無機物が生き物のようにうねり、逆に生き物である、人間である嵐の動きがデジタル化され電子的な音に変わる。無機物が生き物に。生き物がデジタルに。『THE DIGITALIAN』のツアータイトルの意味が、ずどんと心に響く。
そして始まる曲、「Hope in the darkness」。『THE DIGITALIAN』を掲げたアルバムの中で、自然の生命を歌う曲。大地に咲いた花、風、海、満天の星――。
曲を聴いただけでは、ある意味アルバムのテーマには一番沿っていない曲だったかもしれない。けれど、その曲がこのツアーのテーマを浮き彫りにした。イントロとして、筋電演出で奏でられる音。そして曲に合わせて光るファンライトが、時には大地に咲いた花に、海に、満天の星にさえ見える。
人間である嵐が演出して、人間である観客が持ったファンライトによって完成したデジタル技術で自然の生命を表現する。どこまでがデジタル?どこまでが自然の生命?考えれば考えるほどなんだかもうよく分からなくなってくる。ただ分かるのは、こんな演出を実現した嵐のとてつもない実力である。

『素晴らしき明日へ――』。そうしっとりと、しかし力強く歌い上げて、普通だったらここでコンサートが終わるところだろう。しかし近年の嵐はそう単純に終わりはしない。
「Hope in the darkness」で客席の感動を誘ったところで、流れ出すイントロは「Zero-G」。今アルバムのリード曲であり、最もこのアルバム及びツアーのテーマを体現しているであろう曲。
最もデジタルとは遠いしっとりとした曲を歌った後に、バリバリのデジタル曲を格好よく踊る嵐のセットリストの組み方がニクすぎる。
ムービングステージに乗って白い衣装で踊るというシンプルな演出ではあるものの、目が覚めるような格好よさ。そして、メインステージに戻って曲が終わったところで、ド派手な特効と共にジャンプしてそのままステージ下へと消える。あまりに印象的過ぎる終わり方に客席がポカンとしていると、モニターにゆっくりと浮かんできたのは「THE END」の6文字。


完敗だ、と思った。何に負けたのかといえば、私のめちゃくちゃ高いと思っていた嵐コンへの期待度さえも遥かに超える完成度だとか、他グループを応援する者、特に嵐担を降りてえび担になった者として他グループファンの視点から見た嵐のコンサートのとてつもない実力だとか、多分、そういうものだと思う。
あまりに凄すぎるコンサートを見せつけられて、ぽかんとしながらも、まず私は拍手を贈り続けた。このとんでもないコンサートを、その場で今すぐに讃える術はまずそれしか思い浮かばなかった。
でも拍手だけじゃなくて嵐を呼ばなきゃ、アンコールも見なきゃと思い(その後もしっかりとコンサートが続くことはちらっとネットで見ていたし、規制退場のアナウンスもまだだったので)嵐コールに切り替えたけれど、正直嵐コールをする以上に、まだまだしばらく拍手を贈っていたかった。拍手を贈りながらこのコンサートの素晴らしさを讃えたかった。そして浸っていたかった。
アンコールと叫ぶよりもひたすら拍手を贈りたくなるコンサート、というのは初めての経験だった。


暫く嵐コールを続けていると、モニターの映像が切り替わる。15年分のシングルのジャケットやPV。それぞれ(少なくとも私は)この頃嵐に出会ったな、とか、この曲好きだったな、とか映像を見ながら懐かしんで、そして流れてくる「A・RA・SHI」のイントロ。それぞれメンバーカラーの、そして15年分の写真やコンサートのロゴが貼り付けられた気球に乗って出てくる5人。
そこから始まる15年分のシングルピックアップメドレー。先ほどまでは『THE DIGITALIAN』というテーマにかっちりと沿ったコンサートだったのが、打って変わって15周年感謝コンサートに変わる。下手に『THE DIGITALIAN』の中に15周年のことを盛り込まなかったからこそメリハリがしっかりしていて、それぞれのテーマが伝わりやすい。これを混ぜてしまっていたら絶対にどこかのシーンでテーマが脇道にそれてここまで圧倒されるコンサートにはならなかったと思う。2部構成(といってもいいくらいの分量)にするというアイデアが天才。
ピックアップ曲の中に、「Calling」を入れてくれたのが個人的に嬉しかった。去年のコンサートで、相葉さんのドラマの主題歌なのに相葉さんが途中で抜けるという演出だったことに対して一部不満の声が上がっていたのだけれど、もしかしてその評判を聞いたのかな?と少し思ったりもして。何にせよ曲自体もかなり支持が厚いと思うし、にも関わらず昨年のテレビ出演でほとんど歌わなかった曲なので、ここでがっつり歌ってくれたのが本当に嬉しい。
今年のシングル曲も「Bittersweet」以外の2曲はこっちに入れるという選択が秀逸。「Calling」~「誰も知らない」でダンスで魅せた後、「GUTS!」で客席も巻き込んで皆で踊って盛り上がる。

そして挨拶を挟んで、潤くんが『この曲を、"キミ"に贈ります』と言って歌い出す「キミの夢を見ていた」。
『忘れないから 君の声は 聞こえてるよ』『相変わらず 夢を見てる』『変わらないから ありのままを贈りたいよ』『消えないよ目を閉じたって』『いつだってここにいるよ』――国民的アイドルと呼ばれるようになって"嵐が遠くなった"という声が沢山聞かれるようになり。相変わらず勢いの衰えない15周年。
10周年でファンになり、15周年直前で降りるまで、私の周りでも沢山の人が嵐のファンになり、"嵐はチケットとれないから"と心が離れて行ったりして、沢山の人が降りていった。あるいは遠くなったと嘆きながらもやっぱり離れられない人も沢山いて。今回のツアーも、入れなかった人は山ほどいて。"嵐は遠いね"って溜め息を吐いたりして。
多分嵐も知ってる。そういう人が沢山沢山いることを。だからこそ、この曲をツアーの最後に選んだんだと思う。
嵐は遠くなってないよって。俺たちは変わらないから、いつだってここにいるからって。そうツアーの最後に歌う嵐が、やっぱり私は大好きだなって、この曲を聴きながら思った。
チケットはとれないし、とれたとしても席によっては肉眼でほとんど識別できないし。でもツアーに来られなかった人にもweb等でお礼を言って、ドームと言う広い会場で如何にして距離を近く感じさせるかということに心を配る嵐は、どんなに大きくなってもどんなに国民的アイドルともてはやされても大事なところはしっかりと持っている人たちだと安心できる。
『時代はどこまで僕らを追いかけてくるだろう?風を背に受けよう』、この歌詞が今の嵐の状況に重なる。時代はどこまで僕らを追いかけてくるだろう、という言葉が、いつまでこの嵐フィーバーは続くんだろう?と思っていた私の心にぐっと刺さったし、風を背に受けよう、と歌う嵐が、歌詞とはいえど頼もしくて誇らしいような気持ちになったりして。
一番最後の歌詞の、『今 この歌を君へ』。君、っていうのは、ここにいるファンは勿論、来られなかったファンも、もしかしたらこれまでどこかのタイミングで応援してくれた人にまで向けた言葉なのかもしれない。


圧倒的な構成力、飛び抜けた演出力、その根底にある全てのファンへの心配り。
いっそ暴力的なまでに見せつけられた実力と、アンコールの暖かな雰囲気。
進化し続ける嵐と、良い意味で変わらない嵐の絶妙なバランスでの共存
嵐が国民的アイドルたる地位を確固たるものとした所以がここにある、と思った。

Popcornの時、嵐コン最高!と思った。LOVEの時、嵐のコンサートの進化に震えた。そして今年、THE DIGITALIANで、嵐の実力の真髄にただただ拍手を贈ることしかできなかった。嵐はどこまで進化するのか、と去年の今頃考えていたけれど、多分そんなことは考えても無駄で。だってそんなことを考えても嵐は軽々と超えていくのだから。

ただ言えることがあるとすれば、一つ。
嵐のコンサートは、アイドルによる、最高のエンターテインメントである、ということです。