A.B.C-Zが「A.B.C-Z」に挑む――A.B.C-Z Concert Tour 2019 Going with Zephyr

※当記事にはA.B.C-Zコンサートツアー「Going with Zephyr」(と、ワーホリの旅)のネタバレが含まれています。まだネタバレ見たくないという方はご注意ください。

 

 

今回のコンサートで特に異質、というか、これまでにない独特の雰囲気を纏ったコーナーがあった。前半最後に配置された「ボクラ~LOVE & PEACE~」に合わせて行われるアクロバットコーナー。

これまでもアクロバットは彼らの代名詞としてコンサートや舞台では新しい大技などがいくつも披露されてきたけれど、今回はまた趣が異なった。これまでは装置やセットを用いた派手なパフォーマンスが多かったところを、今回はあまりにもシンプル。ステージには花火を出すための装置しか置かれず、彼らは白のタンクトップとメンバーカラーが散らされた白地のズボンだけを纏って、自分たちの体ひとつだけで挑んできたのだ。

正直言って、一番最初に見た時は戸惑った。これまでのコンサートの流れとも、以前までのアクロバットコーナーとも異なる独特な、厳かとも言うべき雰囲気の中、花火だけが彩るステージの上を次々に舞っていくA.B.C-Z。オリンピックの体操会場だったかなここ…?と戸惑った。(後で分かったことだけれど、ここの場面の講師は青森山田高校の男子新体操部の元部員の方がやってくださったらしい)

でも、神聖とさえ思えるほどにステージの上で次々にものすごい技を決めていくA.B.C-Zがとんでもなくて、美しくて、ステージに釘付けになった。

 

その直後にMCに入ることもあってか、私が入った初日の昼公演も夜公演もMCの最初はこのコーナーの話になって、「アクロバットボーイズクラブですから」「大きい装置とかは使わずに、自分たちの体で。床で」と両公演とも話していた。両方の公演でその話をしているってことは、本人たちにとってもこのコーナーは大きい挑戦だったんだろうなあと改めて思った。

 

今回のアルバム及びツアーのタイトルは「Going with Zephyr」。結成10周年イヤーを終え、結成11年を迎えるこの夏、「新しい風を吹かしていこう」という思いを込めてつけられたタイトルだ。

そのタイトルの通り、今回のアルバムはこれまでA.B.C-Zになかったほどに大人の色気を纏った楽曲揃いの作品となっている。そしてツアーも、これまでにないクールで大人なセットリストや演出、OP映像や序盤ブロックの後に挟まれるメンバー紹介映像もめちゃめちゃはちゃめちゃにかっこよかった。1曲目も初めてアルバム曲から、しかもリード曲じゃない曲から始まった*1。それらも全部A.B.C-Zの「新しい風」だった。

 

そんな中で組み込まれたこのアクロバットコーナーは、A.B.C-Zが他のグループにはない、自分たちにしかできないこと――自分たちの最大の武器でありグループが続く限り掲げ続けるその名、ジャニーさんから与えられたその名、「A.B.C-Z=アクロバット・ボーイズ・クラブ」に挑んでいるのだと思った。

A.B.C-Zがデビューして今年で7年が経った。今でも結構音楽特番では若手枠のように扱ってもらえることも多いけれど、気付けば後輩のデビューも増えて、多分もういつまでも若手枠ではいられない。ジャニーズ事務所のアイドルだけでも数多いて、それぞれに魅力があって追い付け追い越せで熱量も凄い。事務所の外にも目を向けるとそれはもうたくさんのアイドルやアーティストがいる。

いつまでも若さとか、若手とか、そういう武器は持ってはいられない。

そんな中で、デビュー7年、結成11年。A.B.C-Zはどう進むか。なにを見せるか。がむしゃらに進んできたけれど今そういうことを考えるタイミングなのかなあとも思う。

そして彼らが選んだのは、「原点に返る」「自分たちの体ひとつで挑むアクロバット」だった。

 

そう考えた時に頭に過ったのは、私がA.B.C-Zに落ちることになるきっかけを作った「A.B.C-Z オーストラリア縦断資金0円ワーホリの旅」のあのシーン。

ゴールのシドニーを目の前にして資金が尽きそうになり、仕事も見つからず、どん詰まりかと思えたその時。彼らが選んだのはアクロバットパフォーマンスだった。路上パフォーマンスをして資金を稼ごう、ということである。

 「自分たちが求められているのはアクロバット、自分たちが見せたいのはアクロバット」――そこにはそんなナレーションが入っていた。

 

 

今回のツアーでもうひとつ印象的でものすごく好きだったのは本編の終わり方だった。

終盤の怒涛のダンス曲の後に「幸あれ」が来たので、あぁこれで本編終わりかなと思った。じんわりと聴き入って、曲が終わったら、次のイントロが流れ始めた。

「FORTUNE」。今回のアルバムでも一番最後に入っている、明るく力強いパーティチューンだ。

(これはアルバムを聴いたときの私の感想)

 

色とりどりの照明がステージを彩り、メインステージでガシガシに踊るA.B.C-ZA.B.C-Zのコンサートは踊らない曲、いくつある…?ってくらい多くの曲を踊りまくるのだけど、最後の最後まで一切の手を抜かず力強くA.B.C-Zは踊る。ちなみにこの振り付けは、塚田くんと五関さんが初めてゼロから一緒に作る共作だという。

諦めないでFotune!挑めFortune!

Don't stop never give up いま誰よりも速く

踊りながらそう歌い上げて、ステージの上にはスモークが焚かれ始める。白いスモークに包まれながら、ステージの奥から差す光の方へ歩いて消えていくA.B.C-Z

そしてスモークが晴れたステージの奥には、一本の旗が風に吹かれて揺れている。

今回のアルバムジャケットにも使われている、爽やかな青空に赤や黄色の花びらが舞っている写真。「A.B.C-Z Concert Tour 2019 Going with Zephyr」というロゴが入っている。*2

 

私はジャニーズグループにはいろんな形があって、大きく分けると「メンバーが円を作った真ん中にそのグループの形が生まれる」「真ん中にグループの旗があってそれをメンバーが守っている」の2種類あるのかなあと思っている。伝わるかなこれ。私の中で前者は嵐で後者はKAT-TUNだ。

A.B.C-Zはどっちなのかなと考えた。分からないけどどちらかといえば前者なんだろうか、と思っていた。

ただ今、私の心の中にはあの「Going with Zephyr」の旗が風に揺れる景色が焼き付いて離れない。

A.B.C-Z。アクロバットボーイズクラブ。その名と軌跡は私たちが思っている以上に彼らの矜持であるのかもしれない。名というのは時に呪いにも宝にもなると思う。しかし彼らはその名を大きく掲げてその名に挑むことを選んだ。

自分たちの体で魅せる、そしてメンバーへの信頼関係があるからこそできる技たち、一朝一夕では真似できない彼らだけの最強の武器。それがA.B.C-Zにとってのアクロバットだ。

 

光の中に消えていく5人と、風を纏って揺らめきながら堂々と立つ旗を見て、A.B.C-Zがすごく好きだと思ったし彼らが頼もしくて仕方がないしこれから進む道ももっともっと楽しみになった。

A.B.C-ZA.B.C-Zに誇りを持って、信じて、挑み続けるからA.B.C-Zのことをめちゃくちゃ信頼してるしA.B.C-Zの未来は彼らが選ぶなら絶対明るいって思う。本気で。

 

「Going with Zephyr」ツアー初日、2019年8月15日。

2019年の夏もA.B.C-Zは最高だったし、これからもきっともっともっと最高になるって改めて確信した。

 

*1:かつてえび担が「声が小さい」と言われていた頃。構成の中心を担っていた河合くんはえび担に声を出してもらう為に1曲目を大人気曲Vanillaにしたり最新シングルにしたり手を変え品を変え沢山考えてくれた。だから大人なアルバム曲始まりができた今回、A.B.C-Zに「これでいける」って思える自信をつけられるくらいには声を出せるようになったのかなって改めて感慨深くなった

*2:多分合ってると思うけど、文字違ったらごめん